仏教と電子回路技術に共通した目に見えない世界
アミタは、20年近く電子ピアノ設計の仕事をしてきた中で、次のようなことを経験してきました。製品に何か問題が生じている時には、 必ず、原因があり、いくつかの要因がからみ合って、その問題を発生させているということです。 電子ピアノでは、電子基板が必要となりますが、普通、電子基板に使われる電子回路の電気の流れは、直接、目で見ることができないので、 問題として起きている現象がとても不思議に感じられました。しかし、オシロスコープや計測器を使って、何度も繰り返し検証実験をしていると、 必ず、原因が見つかってくるものです。そして、原因が見つかれば、必ず、問題の解決方法があるということです。
仏教の考え方の基本は、縁起、因縁などといわれますが、この真理は、全ての存在には、必ず、いくつかの原因があって、 それらが関係しながら生じているということと思います。これは、何か問題があれば、必ず原因があるという アミタの経験してきたことと似ています。仏教でも、同じように何か問題があれば、そこには必ず原因があり、その原因を見つければ、 問題を解決する方法があるということです。仏教が対象にする人生の問題には、さまざまなものがあると思いますが、最も重要な問題点は、 「人生が苦である」ということだと思います。つまり、仏教は、人間が生きていく上で生じる苦しみの原因について考察し、その原因を見つけ出し、 それを解決しようとする教え(技術)なのだと思います。
日本では、仏教と言うと、葬式のイメージが強く、死んだ人の霊を成仏させるとか、何か不思議なちからによって 悪霊を取り除くとか、願い事をかなえるというイメージがあると思いますが、お釈迦さんの悟った真理は、 そのようなものではないと思います。ただ、四諦を考察することによって、苦しみからのがれる という真理があるだけだと思います。アミタは、まだ、この四諦をよく理解していませんが、 この四諦の重み、真理の尊さは、そう簡単には、語り尽くせない非常に奥深いものがあると思います。
四諦とは、お釈迦さんが、初めて説法された時に使われた真理で、縁起を基本とした苦しみに関する四つの真理、「苦集滅道」です。 その後のお釈迦さんの説法は、この四諦の真理を、わかりやすく説明するために、多くの教えが、方便として説かれていったのではないかと思います。
- 苦:くるしみとはどのようなものかという真理。
- 集:くるしみが何故生まれるかという真理。
- 滅:くるしみは消すことができるという真理。
- 道:くるしみを解決するための八つの方法についての真理。
電子回路の電気の流れは、直接、目で見ることができないように、人の苦しみの原因となるこころの移り変わりも、見ることが難しいものだと思います。
補足説明
【電子ピアノ】電子回路によって制御された疑似的ピアノ。電子回路を用いることによってピアノの音に近づけた電子楽器。 鍵盤部分も、コンパクトでありながらピアノタッチに近い感触をつくり出している。
【電子回路】直流電源によって半導体回路を動かすための電気回路。トランジスタや集積回路などを制御してさまざまな動作を実現させる回路。 疑似的に音を作り出したり、その音を増幅したりする回路。
【電子基板】電子回路に従って実際の基板上に部品(半導体、抵抗、コンデンサーなど)を配置して配線したもの。電子回路が目的とする動作を実現させる為のもの。
【オシロスコープ】電子基板上の電圧の変化などを拾い出して画面上に波形として映し出すもの。基板上のノイズなどの電位差をチェックする時に使ったりする。
【因縁】苦しみを生む原因とその関係を示したものに十二因縁がある。・@無明・A行・B識・C名色・D六根・E触・F受・G愛・H取・I有・J生・K老死。
作成:2015/06/16